「さんたんたる鮟鱇」 (村野四郎)

   へんな運命が私をみつめている リルケ

顎を むざんに引っかけられ
逆さに吊りさげられた
うすい膜の中の
くったりした死
これは いかなるもののなれの果だ

見なれない手が寄ってきて
切りさいなみ 削りとり
だんだん稀薄になっていく この実在
しまいには うすい膜も切りさられ
もう 鮟鱇あんこうはどこにも無い
惨劇は終っている

なんにも残らないひさしから
まだ ぶら下っているのは
大きく曲った鉄のかぎだけだ