詩句(4)

  • 「窪み」 (笹沢美明)
    虚しい明るみから逃れるために どこかに休息所はないものかと 私はこの地上に窪みを求める 虫なく秋を 凍る秋を 果物畑で …
  • 「影」 (笹沢美明)
    五月の朝の白い月が 階段をのぼる 制服をつけた婦人は 美しい影を持つてゐる それは風の中でひらめいて …
  • 「闇」 (笹沢美明)
    果てしない闇が樹の枝に引掛つてゐる ーつの手があちこちの戸を締めてゐる 家を劬いたはるやうに 叮嚀ていねいに …
  • 「黒い雨」 (北園克衛)
    雨 のなかの 鳴りわめく広告塔 冬は 希望に濡れて 泥の街をあるく いろ褪せた 外套 のなかに 温たまる孤独の論理 …
  • 「死と蝙蝠傘の詩」 (北園克衛)
    星 その黒い憂愁 の骨 の薔薇 五月 の夜 は雨すら 黒い 壁 は壁のため の影 にうつり 死 の 泡だつ円錐 の襞 …
  • 「街」 (北園克衛)
    自動車が林檎のやうに光る 彼女たちが美粧院の小さな塔のやうに散歩する とある硝子に頬をよせて ふと秋の冷たさを知つた …
  • 「鳥の一瞥」 (北川冬彦)
    胴体から 首が 離れていていゝわけはないように 指が腕から 足が脚から 離れていていゝわけはない しかし 腕から指が …
  • 「春」 (北川冬彦)
    蟹が、ぶっつぶっつ泡をふいてゐる、 泡がまるで泡みたいに。 その眼も、 面も、 鋏まで、 泡だらけぢやないか。 …
  • 「馬」 (北川冬彦)
    軍港を内臓してゐる。     …
  • 「春」 (安西冬衛)
    てふてふが一匹韃靼海峡を渡つて行つた。     …
  • 「母」 (吉田一穂)
    あゝ麗しい距離デスタンス、 つねに遠のいてゆく風景 …… 悲しみの彼方、母への、 捜り打つ夜半の最弱音ピアニッシモ。 …
  • 「私の詩の中に」(堀口大學)
    私の詩うたの中に真実がないといふので 人たちは私の詩を好まない 私の詩は私の夢なのだが …
  • 「詩」(堀口大學)
    難儀なところに詩は尋ねたい ぬきさしならぬ詩が作りたい たとへば梁も柱もないが 然も揺るがぬ一軒の家 …