「骸骨について」 (村野四郎)

追いつめられて 逃げ場をうしない
思いあまった変身の
このかなしい無防備
もう渇きもせず
濡れることもない
叩けぱ音たてるだけの固い現在

それは貝でも 石でもない
あの顎骨を見たまえ 眼窩がんかを見たまえ
あれが遠い日のぼくの面影だ
あらゆる意味と血を そこに灼きつけ
笑いと歔欷きょき
愛とにくしみを 光と影を
一つの化石となしはてて
あの無限の圧力は遠くに去った

いまは からんとした石灰質の
果しなくなつかしいーつの物象おぶじぇ

かれは墓場にいるとは限らない
ある時 ぼくの形而上学の中を
こっちに向いて歩いてくるのだ

【歔欷】すすり泣き
* 掲載中の詩については原型と違うかも知れない。